現実社会と地続きの異世界を表現するにもいろんな方向性がある

今日はですね、最近行ったアート展覧会の話をします。たまたま観に行った2つの展覧会で、真逆の方法で自分の表現したいものにアプローチしている写真家の方を観て感銘を受けたので。占いほとんど関係ない話です。すみません、アートの話です。
アート展覧会レポートみたいになってしまいました。

息子の美術の宿題がてら、現代アートを見に行くことに

もともと、たまに美術館行ったりする人間です。3ヶ月に1回ぐらいは何かしら観に行きます。うつわか、琳派か新版画か、もっぱら「和モノ」なんですけども(笑)。
で息子が夏休みの宿題で、「現代の作家(生きてる人)の作品を見て、その人の思想に思いを馳せてみよう」という主旨のお題で困っており。じゃあ現代アート系の何かを観に行こうかと、よくそれ系の展覧会をやっている都内のいくつかの美術館をあたると、ありましたありました。

六本木ヒルズの中にある森美術館ですね。高層ビルからの眺めもよいし彼が喜ぶかなと思って、そこでやっていた現代アート展に一緒に行くことにしました。

観に行ったのはこちら
地球がまわる音を聴く:パンデミック以降のウェルビーイングhttps://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/earth/index.html

2020年以降、目に見えないウイルスによって日常が奪われ、私たちの生活や心境は大きく変化しました。こうした状況下、現代アートを含むさまざまな芸術表現が、かつてない切実さで心に響きます。本展では、パンデミック以降の新しい時代をいかに生きるのか、心身ともに健康である「ウェルビーイング」とは何か、を現代アートに込められた多様な視点を通して考えます。自然と人間、個人と社会、家族、繰り返される日常、精神世界、生と死など、生や実存に結びつく主題の作品が「よく生きる」ことへの考察を促します。

https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/earth/index.html

そこで息子は1人の写真家の方の作品に目を留めます

想像以上に、考えさせられる面白い作品が多くて、なかなか良かったですよ。
そう、キレイな言葉で言うと「考えさせられる面白い作品」なんですけど、わたしの言葉で言い換えると「適度にイッちゃってる面白い作品」でして、新聞紙を鉛筆で塗りつぶしてつなげて縦3m横10mぐらいのカーテンみたいな幕にした作品とかどう考えても狂気でしょ(笑)。最高だと思ってしまいました。(※この記事の冒頭の写真がその作品です)

それで息子には、まず自由に見て、その中で自分が気になった作品と作者がいたらメモを取るように言いました。すると彼は下記のアーティストの作品が良かったというのです。

内藤正敏さん

内藤正敏《戦慄》
公式サイトの「展示風景」から引用

現代の中にある異世界を写真で表現しているともいえる

内藤正敏さんは、民俗学者である写真家で、東北の民間信仰を追った作品郡や(引用写真)、即身仏、東北のイタコなどお婆さんをとりまくった「婆バクハツ」などの写真が展示されていました。
確かにすごい迫力です。
綺麗とか美しいとは言えないけど、異質でものすごくインパクトのある存在を「写真」という手段を使って表現しています。

これって、異世界、なんですよね。

現実社会と地続きの、異質なものが存在する異界なんですよね。
息子はわりとオカルト好きなので、それでこの方の作品に惹かれたのかもしれません。

一方、別の写真展も見に行きました

それで、ちょっと話いきなり変わってすみませんが、
近日中にもう1つ、写真展を息子と旦那と観に行ったんです。
それが、見事に上記の内藤正敏さんのアプローチと真逆だったんですよね。それが面白かったので、紹介させてください。

観に行ったのはこちら
KAGAYA 星空の世界展
https://www.sogo-seibu.jp/yokohama/topics/page/sogo-museum-kagaya.html

天の川、月、オーロラ…写真と映像で目撃する、天空の贈り物
SNSでも人気の星空写真家、プラネタリウム映像クリエーター、KAGAYA。写真や映像などで星空の魅力をご紹介します。

https://www.sogo-seibu.jp/yokohama/topics/page/sogo-museum-kagaya.html

美しいですよね、インスタ映えですよね。

いわゆる美しいスポットに行って、そういうところは寒かったり暑かったり山賊的なものに狙われやすかったり、いろいろ過酷な環境にあるのをなんとか粘って滞在して、写真撮ってくるというスタイルです。
いやー、すごく撮るの難しかったんだろうな苦労したんだろうなと思うんですが…。
それでも思ってしまいます。

美しいものを撮るのって難しいんですよね。美しい作品にしかならないから。

わー綺麗だね、美しいね、だけどそれで終わっちゃうよなあ、などと思いながら見ていたら。先日の内藤正敏さんの写真を思い出したわけです。
つまり、
お二人とも、写真で異世界を表現しているんだなあと、その時初めて気がついたのです。

写真で現実に存在しているもので表現する

写真じゃないすか。だから、写っているものは、必ず現実に存在しているんです。
それがいくら異質でこの世ならざるものに見えても、それは現実で、あくまで異世界っぽく見える現実社会の一側面なんですよね。

美しいものを撮って、綺麗で美しい異世界を表現するのと、
美しいとはいえないものを撮って、綺麗じゃない異世界を表現するのと、

表現しているものは真逆なんだけど、その異世界を表現するという軸だけは一致しているのかなあと。

そんなことを思ったのでした。

という話を、美しい星空の写真を見ながら、息子に語ったら…

「お母さん、そんなにこの人(KAGAYAさん)をディスらなくてもよくね?」と怒られてしまいました(笑)。
まあそうすよね。どっちが優れているとかそういうんじゃなくて、あくまでわたしの好みの話です。
こちらをお読みの皆さんも、そんなふうにとらえてもらえたら嬉しいです。

おまけ

上記の「地球がまわる音を聴く:パンデミック以降のウェルビーイング」展で面白かった作品の写真を載せます。

アクリルの玉でボヤけているように見えるけど、観音様なんですよね。
ピクセル・カンノンと、ありまして、なるほど上手いな〜と。

近づいてよくよく見ても、ピクセルはpixelなんですよ。輪郭を掴めない。
リアルで「解像度が低いもの」を表現するとは、すんごく面白い着眼点ですよね。
とても面白かったです。

この展覧会、11月までやっているようなので皆さんもぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
ひとつ牛乳で出来ている作品があるのですが、牛乳、腐るじゃないですか。どうしてるんだろう、定期的に作り直しているんでしょうか。そんなことが気になって仕方がありません(笑)