江之浦測候所に行って、「これは横浜の本牧にあるアレの現代版では?」と思った話

先日、仕事柄の情報収集も兼ねて、小田原にある「江之浦測候所」に行ってきたんですよ。自然系の美術館で、インバウンドにも評判がいいらしい、という話を聞きまして。まあひとまず行ってみたら、思っていた以上にお約束が多いところだったんですが(笑)。ふと横浜の本牧にある某公園と近いところあるなと思い、そんなこんなの体験記です。

江之浦測候所とは?

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まず最初に言っておくと、こちらはカテゴリとしては「美術館」です。公式にもそう書いてあります。ただし、名前からはまったく美術館感がありません。このあたりは、たぶん、わざとでしょうね。

場所は小田原の江之浦。相模湾に面した、崖が連なる海辺のエリアにあります。とにかく景色がいいエリアです。晴れていれば、海と空がよく見えます。そこに建築やら石やら古いものやらが配置されていて、「自然とアートの融合」というコンセプトでやってるみたいです。

わたしは杉本博司さんのファンでもなんでもないのですが。今回は、「最近、小田原に自然系の美術館ができて、インバウンドにも評判がいいらしい」という、仕事絡みの噂を聞いて、ひとまず一回見ておこう、という軽い動機で行きました。

ふらっと行けないのでご注意を

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江之浦測候所で注意しなければならないのは、完全予約制だという点です。
入場は午前の部(10:00〜13:00)か、午後の部(13:30〜16:30)のどちらかを事前に選びます。料金は3,300円。時間で区切っているので、いわゆる「ちょっと寄ってみる」ができません。

アクセスも少し独特で、JR根府川駅からシャトルバスに乗って向かいます。駅から歩いて行ける距離ではないですし、車で行くにしても、思いつきで立ち寄る感じではありません。
つまり、「今日は天気いいし、なんか美術館でも行くか」というノリには、あまり向いていないですね。

ただ、その不便さも含めて、体験として設計されているんだろうな、という気はします。時間を確保して、移動して、ちゃんと構えて行く場所。
観光地というよりは、「見に行く」という行為そのものを前提にした施設です。良くも悪くも、気軽さはありません。

というわけで、次は実際に中を歩いてみて、感じたことを書いていこうと思います。

入館早々、紙を熟読しろと言われる

入館すると、いきなり冊子と注意事項の紙を渡されます。
そして「こちらをよく読んでから中にお入りください」と言われる。
え、なんかちょっと高圧的じゃね? と正直思いましたが、まあなんかそういうノリなのかな? と流すことにしました。

これをちゃんと読まないといけなかった理由は、あとで知ることになります。

それはそれとして、冊子については、中をパラパラと見ると、ひとつひとつの作品の説明がぎっちり書いてあります。
江之浦測候所は、いわゆる「作品が分かりやすく展示されている美術館」ではなく、自然の中に、さりげなく作品やら構造物やらが配置されているので、その冊子を読みながら歩かないと「ここに何があるのか」「なぜこれがここにあるのか」が、ほぼ分からないのです。

極端に言えば、ただの石と、ただの通路と、ただの建物に見えてしまう。大変、不親切ですね(笑)。まあそういうところなんですよ。嫌味でなく。。

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とにかく地図がわかりにくい

全景マップも、なかなかケッタイな形をしています。
細長い廊下のようなものが敷地をズドンと突っ切り、そのまま海に向かって突き出している。普通の「園内マップ」を想像していると、まず戸惑います。

この長い直線は、あとから知るのですが、夏至や冬至、春分・秋分の日の出の方向に合わせてつくられているそうです。
竹林を抜けたり、古代遺跡の痕跡があるという木の根元に石が祀られていたりと、けっこう面白いのですが、難易度が高い。
まあ親切設計ではありません。

紙を読んでいないことがバレて怒られる

冬至の日の出の線に沿ってつくられた、海に突き出した部分と、ガラスの舞台がありまして。
乗りたいですね、乗ってみたいです(笑)。でも近くの係員さんに聞いたところ、「見るだけです。乗れるのは出演者だけです」とのこと。なるほど。

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それで、脇にある海に突き出した通路の先っちょの方まで歩いていったら、普通に怒られました。

「足元にある“止め石”から先に行かないでください」

止め石? なんすかそれ?
と、思ったら、あとで注意書きの紙見て分かりました。立ち入り禁止の目印らしいです。
写真とかでの説明でなくて文章で説明してあるという(笑)。
えー、それで熟読しろって言われたのか。すでに怒られましたが。

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悔しかったので、クローズアップで撮った止め石。↑↑

ただ、この一件で、この場所の性格はよく分かりました。
江之浦測候所は、「勝手に楽しんでいい場所」ではなく、「前提を理解した人だけが入れる場所」なのだと思います。

まあ、そういう設計思想なのだと分かった上で歩くといいのかなと思いました。
少なくとも、行ってみて何も残らない、というタイプの施設ではなかったです。

既視感の正体は、三渓園だった

さて、このあたりまで歩いてくると、もうだいたい分かってきます。
江之浦測候所というのは、日本国内(たまに海外)から集められた、さまざまな「石」を中心とした展示空間なんです。

あちこちから、わりと脈絡なく集められた美術品的な石が、よく整備された庭園の中に配置されている。
その光景を見ていて、ふと、「あれ、これ、どこかで見たことあるぞ?」という既視感に襲われました。

そう、三渓園です。
横浜が誇る珍スポット、明治の実業家・原三渓が、自分の財力にものを言わせて、日本全国から名建築や名品を集めてきて、自分の庭に並べてしまった、あの三渓園(!)

そう考えると、江之浦測候所って、かなりオシャレにアップデートされた三渓園なんですよね。
コンセプトも構造も、根っこはだいぶ近い。
原三渓ムーブには、やっぱり普遍性があったんだなあ、と妙に納得してしまいました。

ディスってませんよ、ほんとに(笑)。どちらの施設も、敷地内は本当によく整備されていて、きれいで、景色も素晴らしいです。
これは嫌味ではなくて、本当にそう思います。

きれいだけど、「石」だしなあ…

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ただ、いろんなところから集めてきたものを、一箇所にまとめて展示するという行為については、やっぱり少し引っかかるところもあります。
とくに江之浦測候所の場合は「石」なんですよね。

怖くて写真は撮らなかったのですが、石仏というか、舟地蔵っぽいものが置かれている場所がありました。
あれ、元いた場所から引っこ抜いてきて大丈夫なんですかね……と、占い師であるわたしは、内心ちょっとビビっていました。

アートだと言われれば、まあそうなのかもしれませんけどね…。でも石だしなあ。

占い師の立場からすると、石はいろいろ念が蓄積するんですよね。バックアップストレージみたいなものなんですよ。だから家相でも石はそういう見方をします。
だからなあ……そこにあった石を持ってきちゃうというのは、そこにあった歴史や蓄積を持ってきちゃうということです。だからけっこう気になるなあ、という感想です。

なんだかんだで、オススメです

いろいろ言いましたが、江之浦測候所は、本当にきれいで、よくできた施設だと思います。
景観も建築も手入れが行き届いていて、体験としての完成度は高い。

ただし、誰にでもオススメできる場所かと言われると、そうでもない。「分かる人だけ来てください」というスタンスですし、それなりの読解力みたいなものを要求されます。

とはいえ、全体としては、よくできた施設であることも事実です。

春分や秋分の日に、もう一度行ってもいいな、とは思っています。
今度は、すでにもらっている冊子を、ちゃんと熟読してからね。

みなさんも行く時は、ちゃんと注意書きの紙を熟読してくださいね、怒られますので(笑)。